ひまわり



「なぁ、絢佳?」



ふと我に返ると、目の前で健くんが切なげにあたしを見つめていた。


周りを見回すと、薄暗い部屋の中で
よく目を凝らしてみると、健くんの部屋だった。









「俺な…「いやっ!!」







健くんの言葉を遮る。

さっきの言葉の続きを聞いてしまったら
あたしの恋は本当に壊れてしまう


だから……
まだ健くんを想わせて?






ただ一つの願いを胸にあたしは言った。





「これからは……
 健先輩って……呼びます」







幼なじみの健くんに初めて敬語を使った瞬間。



そして、あたしと健くんが“幼なじみ”から
“先輩後輩”に変わった瞬間。







「そっか………」


あえて理由は聞かないでくれた健くんの優しさに
あたしの小さな心は大きく波を打った。


そして……言ったんだ










「あたし……ずっと健くんが好きだったよ?」


健くんは少し驚いた顔をうっすら覗かせてから俯いた。







「でもね………?
 諦めなくちゃいけないから……」






心で思っていたことを
いざ言葉にしてみるとなぜか泣けてきた




頬に生暖かい液体が伝った感触がした。






「…絢佳、泣かないで…?」

あたしの頬に伸びた健くんの手を思わず掴んで、
きつくきつく握りしめた。









「…健くんの一番になりたかったよ…

 でもっ……
 健くんの一番は…あたしじゃないから…



 だけど……今だけは想わせて……」





心の傷に溢れ落ちた涙がしみて痛かった


だけど………大丈夫。

あたしなら強くなれる









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