◇◆Side.絢佳◆◇
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「絢佳、着いたわよ?」
「うんっ」
小さい頃のあたしと、若返りしたお母さんが
新築の家に向かうのが見える。
わあ……大きな家。
昔の家よりもキレイ……
「おかーたん!向こうに公園ありゅよ!」
「行ってこようか?」
「うん!!」
お母さんを“おかーたん”と呼ぶ無邪気なあたし。
だけどこの人はあたしの本当の親じゃない。
あたしがこの事実を知ったのは
小学校の終わりだから…
この頃よりあと10年くらい早送りした後。
「絢佳、お友達いるわよ?」
「こんにちは^^」
砂場で男の子と女の子がいた。
これが健先輩と汐莉先輩にあたる人。
あたしたちの出逢いはそんな風だった。
あたしに気付くと駆け寄ってきてあたしの手を握った。
ビックリして逃げ隠れたあたし。
「絢佳、遊んできなさい?」
お母さんがそう言ったのを確認して
健先輩と汐莉先輩に拐われた。
「ねえねえ、名前なんていうの?」
「…あやか」
「どこから来たの?」
「…あやか」
「「ふーん…えッ?!」」
知らない二人に囲まれて、
人見知りの悪いクセが出た。
怖くて怖くて…。
『…あやか』としか言えなかった。
だから、全ての答えが『あやか』になった。
「ま、いっか^^」
「汐莉だよ!ほら、健もっ」
「健やけど…」
三人で笑った。
引っ越ししてできた、初めての“トモダチ”
素直に嬉しかった。
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