ひまわり



この世界に本当に自分にそっくりな奴がいるとしたら
僕は逢ってみたい。

早死してもいいから
一目見てみたい。




そっくりな奴ではなく、
本当に作られたクローンだったなら
逢ってみたくはない。



自分と“似ている”と

自分と“同じ”は
同じように見えて本当は違う。

“同じ”なんて気持ち悪くて嫌だ。



だけど今、僕の腕の中にいるのは
“似ている”のではなく
汐莉と“同じ”。

つまり、汐莉だった





クローンはいないはずなのに
目の前に見つけてしまった。





「……健先輩…?」

と、僕を呼ぶ声も。

背丈も

顔立ちも



全てが汐莉。




「……汐莉」

僕の腕の中にいる汐莉のクローンは
僕の言葉に敏感に反応した。






「あたし…違います」

何も違わねえよ……
汐莉そのまんまなんだよ……






「あたしはッ……」



汐莉のクローンは僕を突き放して言った、





「あたしは絢佳ですッ…!!」




……絢佳?

汐莉じゃなかったのか?




「汐莉先輩じゃないです……
 中原絢佳です、バスケ部の。そして…

健先輩と汐莉先輩の幼なじみですよ?」






僕は自分の記憶がよみがえってきた気がした。



「思い出してもらえましたか…?」



不安げな表情も汐莉だ…
だけど絢佳だぞ。


可愛い後輩の絢佳。





「健先輩……?」


頭を撫でてやると絢佳が笑った。


笑顔は汐莉と少しだけ違って見えた。






僕の脳裏には小さい頃の僕らが映っていた。

汐莉と絢佳と…そして僕。



楽しそうだな?

なあ…汐莉、絢佳?


戻りてえな……








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