ひまわり



体育館の端っこに視線をずらす。



マネージャー同士で練習をしているのが見えて、
僕はシュートを打つ手を止めて思わず眺めてしまった。




パスを貰って、スリーを狙って…

ディフェンスの腰がほんの少しだけ浮く




――…今だ!


僕がそう思った瞬間には
もうディフェンスを抜けた汐莉がシュートを決めた。







……パシュッ





という、聞こえないはずの心地よい音が
ほんの少しだけ聞こえたような気がした。








汐莉の動き…
汐莉のシュート…



汐莉がバスケをする姿に目が釘付けになった。






汐莉は、昔からバスケ部の中でもずば抜けて上手かった。

教えられた動きはすぐに吸収するし、
どんなに難しいことでも簡単にできてしまっていた。






そのせいもあって
中学から始めたはずの汐莉は
ミニバス経験者をも抜かして
見事、キャプテンに上り詰めた。



汐莉のずば抜けたバスケセンスには
驚かされることばかりだった。







「…い……健先輩!!」


と声がして、僕の視界を女の子の顔が埋め尽くした。

突然の出来事に、息をするのも忘れてしまった



僕の視界を埋め尽くした女の子の顔を見て思ったこと……



“汐莉に似てる”




大人しそうな雰囲気をしているのに
人一倍気の強そうな瞳。

クッキリした顔立ち。

『美人の黄金比』といわれる顔の比率。



全てが汐莉そのままだった




よく見れば高校の制服ではなく、
僕らが通っていた中学の制服を着ているのに

僕は全く気付かなかった。



そして、女の子の正体にも
全く気付かなかった。








「……きゃッ!」






小さく聞こえた声。

もうそれさえもわからずに
僕は無意識にその子を……いや、

汐莉を抱き締めていた。








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