「…汐莉?!」
健は女の子を引き離してあたしを見つめた。
あたしは、健の腕の中に飛び込んだ。
久しぶりに包まれた健の腕の中は、強く温かくて……
優しかった。
そうだよ、この胸だよ…。
あたしの大好きな…この胸。
「健…………バカっ!!」
あたしは泣きじゃくりながら健の胸をポカポカと叩いた。
悪いのはあたしなのに……
あたしは健じゃないとダメなんだ。
あたしは思いきり背伸びをして、健にキスをした。
さっきのキスとはまるで違う、
愛のある優しいキスだった。
「汐莉……」
すぐに壊れてしまう骨董品を扱うように
健はあたしを優しく温かく抱き締めた。
服の外でも感じる健の鼓動
ドクンドクン……
ねぇ…
あたしの鼓動はきちんと聞こえていますか?
あたしの病気が
“拡張型心筋症”だと
わかったあの日、
あたしは健に一つの嘘をついた。
そして…あの日から、
あたしの生活は変わった。
今まで普通にできていたことが
できなくなった。
“人と同じ”が少なくなった。
周りからの視線が悲しくなった。
180度変わった世界は、
周りの顔色を窺うことでしか
自分を守っていけない世界で…
その世界で生きていくために
必要なものは全て失ったものばかりだった。
だけど…
そんな世界にも光が差し込んだ
それは…
あたしの目の前にいる、
健の温かい手だった。
健の筋肉質の腕に抱かれていると、
辛い世界を忘れられた。
健の規則正しい鼓動を感じていると、
あたしの鼓動と重ね合わせられた。
あたしの世界で
健は唯一のスーパーヒーローだった
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