昼間の医師の言葉があたしの頭に響く。
………もってあと5年の命です…
……もってあと5年の命です…
…もってあと5年の命です…
やめて…やめて!
頭がグラグラして、激しく痛み出す。
あたしは死なないよ…?
難病なんかじゃない……
ねぇ…答えてよ?
汐莉は死なないって言ってよ?
あたしの心の叫びに答えるように
星が何度も何度も瞬きを繰り返す。
ほら一回…
また一回…
自分の頬にふと触れてみると
生温い液体が指に落ちた。
涙…流れたんだ
散々泣いたからもう流れないと思った。
枯れたと思った涙は、
今もたくさん流れ続ける。
ベッドのシーツに円形の跡を残して、たくさん流れる。
最初はクッキリとしていた跡も
時間が経つと消えてしまう。
しかし、涙はその上に新しい跡を作る
その運動はあたしの瞳から涙が落ち続ける度に繰り返される。
この涙はいつになれば止まるのだろう……。
あたしがここからいなくなる、その時…?
「汐莉……」
再び健があたしの名前を呼ぶ。
健……ごめんね。
あたし…健には秘密を作りたくなかった…
だけど…もし、これを告げてしまったら
健に迷惑かけちゃうから……
健を失ってしまうかもしれないから……
だから言わないことにしたよ。
健を失うなら、あたし一人で耐えればいいだけの話。
ごめんね………
あたしは眠る健の頬にそっとキスをした……
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