「汐莉ちゃん、朝です」
看護師さんがそう言ってから
カーテンを全開にした。
天井がいつもより遠くに感じた。
空がいつもよりぼやけた気がした。
「今日は検査結果が出ますよ」
看護師マニュアルに
載っているような言葉を
スピーカーから流れる
デモテープのような言い方で
看護師さんは言う。
「それでは…」
そそくさと出ていった。
あたしの病室は三人部屋だけど
他の二人はとても静か。
話したことがなければ、
笑った顔も見たことがない。
あたしはここ最近、
病室が同じ人と仲良くしたほうがいいのか、
という疑問にかられていた。
二人が静かで話すのが苦手というなら
それで仕方ないと思っていた。
「あの……汐莉ちゃん?」
あたしの思っていた事とは反対に
相部屋の一人が話し掛けてきた。
「はい?」
今の声、何っ?!
かなり裏返っていた。
すると、二人がぷっと笑って
あたしも意味なくつられてしまった。
「汐莉ちゃんって、おもしろいね^^」
「あ、そう?初めて言われた」
「「あはは」」
あんなに静かで大人しそうな二人が
こんな風に笑うなんて
思ってもみなかった。
「あたし、高橋菜月(ナツキ)。中3だよ」
元気いっぱいの菜月。
最初に、話し掛けてくれた人。
笑顔が可愛くて、妹のような気がした。
「私は松川萌未(メグミ)。高1です」
大人びた雰囲気をしている。
同い年のあたしとは大違い。
美人でキレイなお姉さん
「あたしは、神崎汐莉。高1」
「よろしくね♪」
初めて相部屋の子と会話をした瞬間。
同じ学校の人と話すのとは少し違って、
新鮮で楽しかった。
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