他から見たら
つまらないことかもしれない。
だけど、あたしと桃ちゃんにとっては
つまんなくないこと。
他から見たら変なことかもしれない。
だけど、あたしと桃ちゃんにとっては
とても楽しいこと。
他から見たら
どうでもいいことかもしれない。
だけど、あたしと桃ちゃんにとっては
必要不可欠なこと。
素直に笑えること。
桃ちゃんは今、素直に笑っていますか?
楽しいことを“楽しいこと”と
思えていますか?
「……桃?」
ふと桃ちゃんの名前を呼ぶ声が聞こえた。
見ると、華奢で美人な女の人が立っていた。
「あっ!ママ~」
桃ちゃんが女の人に向かって手を振ると
女の人がこちらに向かってきた。
「桃ちゃんのお母さん?」
「うん!!」
桃ちゃんは即答。
「桃、遊んでたの?」
「うん、桃のトモラチなの^^
ねー!ちおりお姉ちゃん♪」
「え?あ、神崎汐莉です」
あたしはふいに話を振られて、驚いた。
「汐莉ちゃん?ありがとね」
桃ちゃんのお母さんは笑ってこう言った。
その笑顔が桃ちゃんそっくりで
思わず見入ってしまった。
「そんな全然ですよ~…」
お礼言うのあたしの方です、と付け足した。
「そうかしら?
あっ…桃、さっき看護師さん探してたわよ?」
「え?わかった~」
「後で行くから先に行ってて」
「うん!ちおりお姉ちゃんバイバイ♪」
「バイバイ^^」
桃ちゃんは手を振ってから
走って行ってしまった。
点滴のガラガラが桃ちゃんの体と
ミスマッチで可笑しかった。
「…桃ちゃん、可愛いですよね」
「そうね^^
…まだ生きてほしいわ……」
桃ちゃんのお母さんは悲しげに笑った。
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