◇◆Side.健◆◇
看護師さんに車椅子を押してもらいながら廊下を歩いて病室に戻る。
ふいに沸き上がった疑問
…―汐莉、なんで倒れたんだ?
「…看護師さん?」
看護師さんを呼び止めた。
「どうしました?」
看護師さんは歩く足を止め、僕の顔を見た。
「あの……さ…
………睫毛ついてますよ?」
僕の口をついで出た言葉
俺、何言ってんだ?!
こんなこと言いたかったんじゃないのに……
汐莉が倒れた理由聞きたかっただけなのに……
「え?!どこ?取って?」
ほら、女はいつもこう。
どの看護師もすぐ僕に
何かをさせようとする。
でも…汐莉は違う。
…―やべえ。また会いたくなってきた…
「…桜井くん?」
「ごめん、今の嘘」
「……ちょっ…桜井くん!」
こういうの嫌だ。
なんて思う自分自身も嫌だ。
看護師さんは再び歩き出した。
「…看護師さん?」
再び呼び止める僕。
“汐莉って病気なんですか?”
口のすぐ手前まで出かかって
必死で堪えた。
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