「…ごめん…ね……健…」
汐莉が泣いてる。
涙拭いてやらなきゃ…
そう思って、手を伸ばすも痛くて無理。
「健、わかるか?」
兄ちゃんが言う。
「…兄ちゃん」
良かった、声はちゃんと出る。
「あんた寝過ぎ。
心配するでしょ?」
姉ちゃんがいたずらに笑って僕の頬をつつく。
うるせーよ、と言い返す。
「…たけ…る……」
汐莉が涙ながらに僕を見る。
「汐莉…なんで泣いてんの?」
「あたしのせいで……健が……」
「ん……?どういうこと?」
汐莉の話す動きが止まった。
そして、俯いた。
「あのね…
…健とあたしは2日前に事故にあったの」
汐莉がポツリと話し出す。
事故……?
2日前……?
「あたしが横断歩道で転んだの…
そして健が立ち上がらせようとした時…」
汐莉は泣き崩れた。
「二人にトラックが突っ込んできた。
それであんたが汐莉ちゃんをかばって…
トラックに衝突した」
姉ちゃんが代わりに話す。
そうだ……。思い出した。
僕はあの日、汐莉をかばって代わりにトラックにぶつかったんだ……。
「…ごめんね……」
汐莉が泣いてる。
「汐莉のせいじゃないだろ?」
「でもっ………
健……
試合出れなくなっちゃったんだよ……?」
本当に……なのか?
試合、出れないのか?
「全治3ヶ月の複雑骨折…だって。
両足ね……?」
姉ちゃんの言葉で目の前が真っ暗になった。
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