◇◆Side.汐莉◆◇



「よし…!」


朝日ヶ丘高校の制服に身を包んで、深呼吸を一つ。




「いってきます」

鏡の中の自分に向けて挨拶。

にこっと笑顔を作って…



部屋を出た。





「汐莉、お弁当ね?」



お母さんが渡してくれる。



「ありがと」



少し素直になって笑顔で言う。

「健くん待たせちゃ悪いわ。
いってらっしゃい」



お母さんもたまにお母さんらしいこと言うじゃん?



わかってるって、と笑顔で言い残して玄関のドアを開ける。






「いってきます」



柔らかく降り注ぐ太陽。

早足の雲。




そんな空の下に見つけた。




「……健!」

「お、早いな?」

なにそれ、いっつもあたしが遅いみたいじゃん、と言いながら駆け寄る。



「だって遅いじゃん?」

「女の子は時間が掛かるのーっ」

「汐莉って…いちおう女だっけ?笑」

「最ッ低!!」



デリカシーがないヤツ!!
少しむくれてみる。





「ばーか。」


健はそう言ってあたしの膨らんだ頬をつんつんつつく。



「バカだもんっ」

「可愛くないヤツ…笑」




可愛くなくて結構。
あたしは元から可愛くないもん。




「汐莉、早く後ろ乗んな?」

「へ……?」

「…だからチャリで行くの!」



ああ…はい。
健の乗る自転車の後ろに馬乗りで乗る。


「汐莉……お前バカか?」

「え?なんで…」

「普通、馬乗りで乗らねーだろ?」



今、気付いて恥ずかしい//





「ほら、早く乗れ?
 遅刻すっぞ」

しぶしぶ、横乗りで乗る。



転びそうで怖い。
健の背中に掴まった。




「おっと、積極的?」

「……うるさい///
 早く行って…!」




ずっとこうしていたい……なんて思ったりしてるところが、
あたしの変なとこ。







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