◇◆Side.汐莉◆◇




―――3月 14日



『―答辞……桜井 健』

「はい」




健が名前を呼ばれて壇上に上がる。

今日は中学の卒業式。




「桜の蕾が花開こうとする今日、3月14日…

 僕らはここから巣立ちます


 思い返せば……」


健が話し出す。
あたしの頬に涙が伝う。





3年間通った学校と…
3年間連れ添った友達と…

お別れだと思うと、どうにも涙腺が故障してしまったみたい。




健の答辞。

あの健が答辞をするなんてね…。笑


入学式の時は、そんなこと思いもしなかったよ。






一番のやんちゃ坊主で先生に一日一回、怒られるのなんか当たり前。


でも成績だけはいいから、先生方は諦めるほど。




そんな健が……ねぇ。





「この学校で僕がしてきたことに…
 後悔はしていません」




少し反省しようよっ……笑


一人で心の中でツッコミを入れる。





「僕は今、胸を張って言えると思います。

 僕らが過ごしてきた3年間は決して…間違ってなんかいなかった、と。



 本当に3年間、ありがとうございました……

 感謝の思いで一杯です





 第70年度、卒業生。
 桜井 健」




自然と涙が溢れ出る。
あたしの涙は止まらなかった。





パチパチ……


拍手喝采。
改めて、健の凄さを実感した。




健の言葉に涙する保護者、卒業生。

拍手喝采する在校生、先生。





卒業式…。
最後の最後に学校全体が一つになった。






ありがとう……

その言葉しか出てきません…









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