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◇◆Side.健◆◇



桜が舞って、水溜まりに落ちる。

花弁がひらひら。



…何度、こんな時を見てきただろう。
僕は汐莉と何を見て、何を聞き、何を知り、何を想ってきたんだろう。

少なくとも、僕の心の中は汐莉の笑顔の他には、何もなかったように思えるけど。



僕が足を止める。
隣を歩く陰が揺れる。


あれから二人でたくさんの日を越えてきた。
どんな辛い出来事も二人で越えてきた。

だからこそ、出来る。




クラスメイトが泣き、
先生が誇らしげに生徒と肩を組み、
笑って写真を撮る、あの季節に。

僕はこの季節に、何度想いを馳せたんだろう。







「…もう、卒業だね」


見馴れた校舎。
その、玄関には堂々と“ご卒業おめでとうございます”の文字。

なぜか無性に顔が綻ぶ。


嬉し笑い?
…いや、苦笑い。






「なんか…短かったよな」

「うん」




そう思うのはきっと…
高校での生活に加えて僕らには、たくさんのことが起こりすぎていたからかもしれない。