----------

「……バカ汐莉」




控室から教室に戻ると、健が夕焼けを背中に浴びながら窓際に立っていた。

その姿は、あまりにもカッコよくて。
不覚にもドキドキしてしまった。



「何よ、バカたけ…」

言い終わる間もなく、健に抱きしめられた。

いつも以上に強い胸に顔を押し付けて健に埋もれた。



「……泣かせんなよ」

「えっ?」



驚いて顔を上げると、健の頬にはキラキラ光るものが伝っていって……
あたしの頬に落ちた。

それは生暖かくて、改めて涙だということを実感させられた。


「…もう離さないから。
汐莉、愛してる」

「あたしも…愛してる……よ」





もう愛してるじゃ足らない。

健がそばにいて、微笑んでいてくれる。それだけでいい。

それだけで、こんなに幸せなことってない。




どんな言葉よりも健がいい。
健しか要らないんだ。

あたしには健しか見えないよ。








健に気付かれないように、そっと大好きだよって呟いた。