「あ…やっぱり混んでる」

一つしかない電話ボックスの周りにはたくさんの人が待っていた。

電話ボックス増やせばいいのに……。



このまま待ちぼうけするのは時間の無駄なので、あたしは病室に向かうことにした。

途中、幼稚園くらいの小さい子の集団がロビーで遊んでいたり、窓の外ではおじいさんとおばあさんが手を取り合って歩いているのが見えたりした。

そんな姿に少し心が癒された。







ガラガラっ……

軽く戸を開け、あたしは驚いて顔を上げた。



あたしのベッドには

「おかえり」

と言って笑う健がいたから。




「…どうして?」

喉の奥から必死に引きずり出した声は妙にかすれていた。


「ん?汐莉に会いたかったから」





恥ずかしげもなく、サラっと言ってのける健に少し感心しながらあたしは微笑んだ。

ゆっくりとベッドに近づいて健の隣に腰掛ける。