「……汐莉、愛してる」
もう一度強く抱きしめてから僕は、汐莉の唇にそっとキスをした。
壊れないように。
失くさないように。
消えないように。
神崎汐莉
という存在を確かめるようにして、何度も何度も口づけをした。
こんな風にすることしか、僕にはできないから。
僕は精一杯抱きしめた。
最後に深く口づけをすると、汐莉から少し離れた。
「…汐莉に……」
そう言って、僕は汐莉の細く小さな指にピッタリの指輪をはめた。
「え……これって…?」
驚いて手を開いたり閉じたりしている汐莉。
そんな指輪だけど……
気持ちは入ってるから。
「婚約指輪。
まだ…そんな安っぽい物は買えないけど……
俺は汐莉のこと愛してるから、
…ずっと側にいたい」
「あたしも…っ」
ついに汐莉の大きな瞳から涙が零れた。
「…あたしもね…っ…」
「……うん」
汐莉の涙を指ですくいながら片方の手で汐莉を抱きしめる。
「…健のこと…っ」
「……うん」
「……愛…してるよ…っ」
「……うん」
「…だから……っ」
大きく息を吸って、汐莉は僕の瞳をとらえた。
「…あたしとずっと一緒にいてください」
「……当たり前」
そう返事をしてから僕は汐莉を抱きしめ、深く深くキスをした……
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