「あのさ…健?」


あれからジェットコースターやらお化け屋敷やらを楽しんで、僕達は観覧車に乗り込んだ。

向かい合って座り、窓から見える景色を眺めていた時。



そこでぽつりと汐莉が切り出した。


真面目な顔してたから曖昧に返事を返して、次の言葉を待つ。





「今日、ここに連れて来てくれて本当に嬉しかった。
…本当にありがとう…」


「……突然でごめんな」




心なしか、少しだけ汐莉の声が震えているような気がして僕は目を伏せた。







「あのね……」

「次はティーカップ乗りたいか?」



お願いだから……。





「あのね…?」

「メリーゴーランドの方がいいか?」



お願いだから。





「あの……」

「もう一回お化け屋敷でも入るか?」



「違うのっ…!!」






もう何も言わないで。
ただ景色を眺めていて。

こんなに辛そうな汐莉の表情は…見たくないよ。







「健……あたしね…」

「……言うなよ!!」

「え……?」



突然怒鳴り声を上げた僕を驚いて見上げた汐莉の目には、うっすらと涙が滲み今にも泣き出しそうな顔をしていた。


あまりにも見ていられなくて、僕は汐莉を強く抱きしめた。






「……たけ…」

汐莉の唇に人差し指を当ててから、さっきよりも強く強く抱きしめた。




苦しむのは僕だけでいい。

悲しむのは僕だけでいい。

辛いのは……僕だけでいいから。





汐莉にはそんな辛そうな顔、してほしくない……