あたしは走った。


友人のために走り続けたメロスみたいにカッコ良くなくても、
素晴らしい目的じゃなくても、
間に合わなくても、
全てが上手くいくわけじゃなくても……。



この答えだけは、突き止めておかなくてはいけない気がしたんだ。



だから、あたしはひたすら走った。







今なら………。
わかる気がするよ?



ずっと前、あたしの夢に出てきた女の人の正体も、聖斗の正体も。

今のあたしなら、わかる気がするんだ。






「…健っ………!」




いつの間にか、日が傾きはじめた空の下。

あたしは小さな小さな墓地に立っていた。




そこには、あたしのお父さんと健がオレンジ色の光を受けながら、一つのお墓に拝んでいた。

もしかしたら、あたしが知ってはいけないことなのかもしれない。



だけど、知らずにはいられなかった。

あたしの足が、手が、頭が、心が。


知りたいって言ってる。









「お父さん……健…」


あたしが声をかけると、健もお父さんも驚いた顔をした。

それから、健が先に口を開いた。




「……なんで汐莉がここに?」

「…あたしにもよくわからないよ…」

「…そっか」


やけに落ち着き払う健に比べて、お父さんは落ち着かないのか、あたしとお墓を交互に見たりしている。




あたしはゆっくりと視線を健からお墓に向けた。

そこには
“神崎家之墓”
と書かれていた。


あたしは特別驚くわけでもなく、小さくそっかと呟いた。







「お母さんと聖斗のだよね?」

わからなかったことが全て繋がった気がした。