ひまわり

―境界線

◇◆Side.健◆◇


「健っ！おはよ」



いつも通りの朝。
汐莉と一緒に学校に行って一緒に帰ってくる。
ただそれだけ。



「汐莉、おはよ」


それだけのことなのに僕は、この時間だけ汐莉が彼女のような感覚に陥る。



汐莉は嫌じゃないのかな？

幼なじみとずっと一緒って嫌じゃないかな？




「……健…？」

汐莉が不思議そうな顔で
僕の顔を覗き込む。
ふいに視線に入った汐莉の大きな瞳が、僕を驚かせた。


「な、なに？」

「ううん。なんかぼーっとしてたから…」

「…そう」

「あのさ…健？もしかして、あたしと一緒に学校行くの嫌？」




……へ？

思いがけない言葉。
汐莉がそんなふうに感じていたなんて初めて知った。




「……なんでそんなこと言うんだよ？」

「…いや…嫌ならあれかな、と思って」



汐莉………なんで？
俺には汐莉しか見えない｡

だから…
そんな悲しそうな顔しないでくれ…



「……なわけないだろ」

「そっか……よかった」


ホッと一息つき、少し安心したような顔をした｡

汐莉の可愛い顔を見たら理性が飛んで、本能が現れそうになる。



「な…汐莉？」

「ん？」




俺…汐莉のこと好きだ


と言いそうになる。
でも、我慢した。


今、言ったら汐莉は俺から離れてく…
それだけは嫌だから……
まだ言わない。




「いや…なんでもない」

「そう…なんか今日の健変だよ？」

「そうか？」

「うん」





汐莉が笑う。
僕は、その笑顔を守りたい。

ずっと隣で…すぐ傍で見ていたい。




でも…“幼なじみ”という、境界線を越えてはいけないんだ。

だけど…汐莉が好きだ。









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