「じゃあ、メガホンと何か買ったら大丈夫だね!
汐莉、本当ありがとう~」
「……やっ…えっと…はぁ……」
涙ぐみながら喜んではしゃぐ里実を見ていたら、今更弁解するのも面倒臭くなった。
あたしは思い切り大きなため息を吐き出した。
頭の中では、どうしようという言葉だけがぐるぐる回っていた。
もともと家庭科は苦手で、できなくて。
できないからお裁縫なんてやったことなかった。
なのに………
ミサンガを作れと?
あたしに?
無理無理無理。
断固否定して、そのことについては触れないようにしてきたのに……。
今更だけど、一緒に作ってとか言えないし……。
うーん……。
そんなこんなで考えてるうちに、里実はあたしを置いてずんずん歩いていくし。
もうちょっとでチャイム鳴るし。
急ぐ気とか、全然起きないし。
とぼとぼと進むあたしの足は、
教室ではなく、屋上に向かっていた。
…ガチャ
屋上のドアを開けると、キレイな空が見えた。
屋上に来ると思い出すのは、卒業式のこと。
逞くんのことを初めて怖いって思った。
男の人って怖いって実感した。
でも、健が助けに来てくれて。
本当に嬉しかったな……。
あの日だけ、健がスーパーマンに見えたもん
まさか、健が助けてくれるなんて思わなかったから、驚いたのが一番だったけど。
必死な健の顔見たら、笑うに笑えなかったな……
なんて思い出し笑いをしていたら、横から声が聞こえた。
「……何、ニヤニヤしてんの?」
ん?
……え。ええええええ?!
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