「………ねぇ、健?」
「んー?」
あたしはなんとなく健の声が聞きたくなって、小さく話し掛けた。
健の広くて大きな背中に顔をくっつけて、健の体温を感じる。
じんわり伝わるぬくもり。
あたしにはそれが心地好くて
「こうしてるとさ?昔を思い出すなあって」
「ああ~確かに」
「…懐かしいね?」
あたしがそう言うと、健はフフッと軽く笑って相槌を打った。
そうだ、二年前くらいまではあたしと健は
“幼なじみ”だった。
健への想いを知って、どんどん好きになって……
けれど、幼なじみの関係を壊したくなくて
自分の心に鍵をかけた。
知られないように、
気づかれないように。
必死で守りつづけた。
傷付かないように、努力した。
でもあの日、健から聞いた言葉は
あたしと同じ気持ちを表す言葉だった。
きっとあの時、健の言葉を聞かなかったら、
今頃のあたし達はすれ違って、
お互いの気持ちに気づかないまま過ごしていたかもしれない。
だとしたら、あたしが想いを伝えたことは
決して間違えなんかじゃないって思うよ。
バスケが上手で
カッコ良くて
優しくて
たまに可愛くて
頭が良くて
やること子供で
スポーツ万能で……
非の打ち所がない健は、
あたしにはもったいないくらいのヒト。
「……全国、連れてってやるよ」
「うん!!」
健の決意の言葉にあたしは力強く頷いた。
「よっしゃー!行くぞ!」
「きゃあっ」
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