ラジオをつけてみた。



『―……それって恋じゃない?』


あたしは心臓が飛び出るほど驚いた。




恋………?

なんだそれ。




あたしは生まれてから恋とは全く縁のない生活をしていた。

だから、恋がどんなものか知らない。





「……ねえ、お祖母ちゃん?

 あたしのこの想いは…
 恋っていうのかな?」




返事は返ってこない。


「健……
 あたし、どうすればいいのかな?」


もしこの想いを、『恋』と呼ぶのなら
あたしはこの想いを健に伝えてはいけない。




伝えたら、もう前には戻れない。








だから、胸の奥に仕舞っておくんだ。

いつか、想いが溢れてしまったときには……
この恋の終わり……。




でも……






誰もいない部屋で一人、涙を流した。



ただ………ただ。
溢れ出す想いが涙に変わって流れ続けるんだ。











どれくらい泣いただろう。


カーテンの隙間から見える空は蒼く、何もかも包み込んでくれるような……

そんな気がした。




鞄を開けて、進路表を取り出した。


シャーペンで書き入れていく。





頭の中では健の声がこだまする。




『俺も朝日ヶ丘目指すから』





あたしは欄に書いた。






〔進路……朝日ヶ丘高校希望〕




今だけ…願ってもいいよね?


健と一緒に朝日ヶ丘高校に行きたいの………


どうか…
叶えたいの………








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