将生………。
早く出てきて………
病院の待合室で将生が出てくるのを
今か今かと待っている間、僕は高体連のことを考えていた。
きっと僕は、将生と共にプレーしていないと自分のプレーが出来ないんだ。
将生はチームで唯一のポイントガード(PG)。
だから、将生がいないとゲームメイクをする人がいない。
将生が作り出すゲームが旭ヶ丘高校のプレーに繋がっている。
つまり、むちゃくちゃ大切な役割ってこと
そして将生がいないと旭ヶ丘高校はプレーがおかしくなるってこと
将生はチームの中でも、一番お互いのことをよく分かっている仲だから……。
試合中でも、パスをする場所だって
“きっと将生がいるだろう”
という思いがあるから、できているプレーがたくさんあるんだ。
将生は心の支えでもあり、僕の中の大切なパートナーでもある。
ガラッと処置室のドアが開いて、
広瀬先生と将生が出てきた。
将生の右足には痛々しいほどの数の包帯が巻かれていた。
「へへっ…心配かけたな」
正直、ホッとした
将生が笑っていたから。
嘘でも笑っていたから。
「大丈夫だったのか…?」
「おうよ!!吊っただけだよ」
吊っただけ?
まさか……そんなはずはないはず。
普段からあまり痛いとか言わない人だから、
今回の痛がり方は尋常なかった。
嘘なんか……つかなくてよかったのに。
だけど僕は笑顔で
「バーカ。吊ったくらいで大袈裟なんだよっ」
イヤミを言ってやった。
「ははは、演技だっつの」
嘘つけ。
演技だったらあんな辛そうな顔はしないはず。
わざと嘘をつく将生の姿が、僕には痛々しさが倍増しているように見えた。
将生の痛みが僕の心の痛みと変わって、
チクンと小さく刺した。
.



