◇◆Side.汐莉◆◇



健が帰っていった。

あたしは何もできずにその場にしゃがみこんだ。





さっきまで健に抱きかかえられていた感覚がまだ残っている。


健は側にはいないのに、なぜかドキドキする。




あたし……変だな。

なんで幼なじみにドキドキしてんだろ…



バカみたい。






擦りむいた膝が痛い。

血がまだ流れていて、止まる気配はない。



「………健ぅ……」





久しぶりに感じた健の温もり。

小さい頃はお姫様だっこなんか
当たり前だったのに……



される前にあたしがしてたくらいだったのに…



なんでこんなにドキドキするの?




考えてもわからなかった。



重たい体を持ち上げ、玄関に入る。




「…おばあ……」


呼びかけてやめた。
そうだ、お祖母ちゃんはもういないんだ。


汐莉のお祖母ちゃんは、ついこの間天国に召されてしまった。




お祖母ちゃんは汐莉が生まれてからこの前まで、ずっと一緒にいた。

健と同じように…。





怪我をすればお祖母ちゃんの所に行って、手当てしてもらっていたし、

病気になればお祖母ちゃん特製のレモンなんとかっていうスープを飲ませてもらった。




汐莉にとって、お祖母ちゃんの存在はとても大きかった。



両親は共働きで家にはいないし、あたしには兄弟もいない。


お祖母ちゃんが唯一の仲良しな家族だったから。




そんなお祖母ちゃんがいなくなって、あたしは暫く立ち直れなかった。

でも……あたしの側には健がいた。





「…あー…もうっ!!」


わかんない。
自分の気持ちがわかんない。









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