いつの間にか健は大きくなっていて、あたしの体なんてすっぽり隠れてしまうくらいだった。
あの頃より、少し伸びた髪。
今は、頭一つ分上にある目線。
昔より低くて甘い声。
大人になった顔立ち。
優しくなったイジワル健。
あたしが思ってたよりも健は大きくなっていた。
大きく強くカッコ良くなった。
あたしはギュッと健の腕にしがみついた。
……そうだ。
あたしにはこの腕じゃないとダメなんだ…。
この筋肉質で細く強い腕じゃないとダメなんだ。
この腕で抱きしめてもらわないと
全然安心できないよ…
あれ、いつからあたしこんなに健に溺れてるんだろう?
健のことが好きで好きでおかしくなりそう
あたし、こんなんじゃ生きてけないよ…
「汐莉、怖くなったらしがみついていいから。
俺になんでも言っていいから。
全部、俺が受け止めるから」
「…うん」
小さい子でもあやすように健はあたしに優しく言った。
その言葉たちが本当に本当に嬉しくて
ずっと健の傍にいたいと思った。
「…汐莉が望むなら俺はなんにだってなるよ」
「じゃあ………」
あたしは健から離れて健を見つめて
きちんと言った。
「あたしとずっと一緒にいてください
もう……離れたりしないでね」
そんなあたしに健はフッと笑って
「了解しました、お嬢様」
おでこに優しいキスをくれた。
「…俺はこれっぽっちも離れる気はないけどな」
って小さな声で呟くのが聞こえて、あたしは笑顔になった。
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