「またやってんのか~?
二人とも少し大人になれば?」


口喧嘩してるとこにのこのこやって来た兄ちゃん。

完全に兄ちゃんの周りだけ場違いな雰囲気が流れている。




桜井 舜 サクライ シュン

高3



兄ちゃんは俺の小さい頃からの憧れ。


整ったパーツ。

180㎝の長身。

学年トップの脳。


まさに完璧。



「今日くらいは仲直りしろよ?」


兄ちゃんの言葉で少し気持ちが落ち着いた。



「今度から静かに下りてきてよ?」

「はいはい…わかったよ」





やっと仲直り。



「みんな、元気だったか?」

どこからともなく父さんが現れた。


いつもの穏やかさが、そのままだった。



――タイミング良すぎ…
さすが、父さん。(笑


「「「元気だよ」」」


語尾まで揃っての返事。


「おお~!!さすが仲良しだな」

父さんと母さんがパチパチと拍手をくれた。




こんな光景は久しぶりで嬉しかった。

「さ、ご飯食べましょ?」


母さんの言葉で、
みんなが一気に食卓の席につく。





「…健はもう受験生だな」

「へ?…お、おう」

「どこに行くか決まったのか?」


さっき、決まったよ。


「…朝日ヶ丘」




そうか、と父さんは言って
ほんの少しだけ寂しそうな顔をした。

なんでそんな顔するの…?




やっと決まった進路だよ…?



僕が不思議そうに見つめると視線を逸らして、話を変えた。




「…やっぱり母さんの料理は絶品だな!」

笑顔で頷く、姉ちゃんと兄ちゃん。

照れる母さん。






この光景がずっと見たかったはずなのに…

なぜか、今は心苦しい。




久しぶりの家族の団らんに
僕は表情を無くし、参加した。








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