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「ねぇ……健っ…?起きてよ~……」
ツンツンと頬を突かれて、揺さぶられて
僕はゆっくりと目を開けた。
「健~……」
汐莉が僕の前に涙目でしゃがんでいた。
その表情は今にも泣き出しそうで
僕も悲しくなった。
「……ばかぁ~」
汐莉はそう言ってから僕にしがみつくようにして抱き着いてきた。
なんか汐莉じゃないみたいだな……。
やけに積極的で可愛い。
僕は汐莉の小さい体を抱きしめた。
ふわりと汐莉の優しい匂いがして
サラサラな髪の毛が僕の肌に触れる。
抱きしめていると、汐莉の体温が感じられて
すごく温かいキモチになった。
……これって、俗に言う“愛”ってやつか?
「なんで泣いてんのかわかんねぇけど……泣くな」
「……うん」
汐莉の肩が少しだけ小刻みに震えていた。
「……寂しかった」
「え?」
「健は寝てるし、みんなはいないし……寂しくて…」
「そうだったのか…?……ごめんな」
震えながら泣く汐莉を僕は、すごくすごく愛しいと思った。
「あのね……」
あれから少し時間が流れて、陽が傾いた頃。
ベンチに並ぶ二つの影。
そのうちの小さな方がポツリと話し出した。
「これ聞いても驚かないでね?全部本当のことだから……」
「うん、わかった」
深刻そうな表情がフッと緩んで
汐莉が小さく笑った。
小さな小さな笑顔は今にも壊れそうで怖かった。
「あたし……病気なの、心臓の。」
――ドクン
僕の鼓動は耳まで届くくらい大きく打った。
心臓の病気………?
汐莉が?
なんで……?
いつわかったんだ……?
治るのか…?
頭の中を駆け巡る。
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