里実が背中を押してくれたけれど、
あたしはまだ健に伝えられる覚悟ができてない。
でも、ちゃんと言うから。
健にきちんと伝えるから。
正直言うとね、あたし……まだ健を信じきれてないかもしれないの
もしかしたら、あたしの病気を知って
そう長くは生きられないってわかったら
その場ですぐ捨てられるんじゃないかって……
そう考えると怖いの。
健はそんな人じゃないって思ってるけど
99%の確率で大丈夫かもしれない
じゃあ、残りの1%は?
とか思っちゃう。
だから覚悟がまだできないんだ……
ごめんね、健。
健のこと……ちゃんと信じてあげれなくて…
どうしたら覚悟、できるのかな……?
あたし、自信ないよ
「……健」
となんとなく呟いた。
……その瞬間
「ん?」
“ん?”はこっちの台詞なんだけど
……って、えええ?!
「た、た、た、健ぅ?!」
「何?」
あたしは驚き過ぎて
口を金魚のようにパクパクさせている。
なんで横にいるのぉっ?!
「なんでいんのって思ったろ?ごめん、麻衣ちゃんと交換してもらった」
へー、そうなんだぁ
……ってそうじゃなくって!!
「ここは誰!!私はどこ!!」
そうあたしが言った時、周りがシーンと静まった。
健までも固まっている。
「…は?汐莉、どうしたんだよ?修学旅行の飛行機の中なんだけど……」
あの健でも笑顔が引き攣っている。
……え、あたし変なこと言った?
「……え、あっ…ああそうだよねっ!!」
修学旅行に来てることも覚えてないあたしって……
どうよ?
「やっぱ汐莉、変!!」
はい?
今更何をおっしゃるの、健くん。
あたしはもともと変なのーっ
「……んぐっ」
心の叫びが聞こえたのか、あたしの頬は健の両手によって
お餅のように引っ張られた。
……痛い。
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