「…健、ご飯できたわよ」

ドアの向こうから母の声が聞こえる。



「やべ…飯だから、またな」

『―おぅ、また明日』




脩大の電話を切り、充電器に携帯を置く。
階段を駆け下りて、リビングに向かう。




今日は珍しく父が単身赴任から帰ってくるということで楽しみだったのだ。



父は僕が小さい頃から海外に単身赴任ばかりしていて、家に居ることが極端に少なかった。



だけど、僕はそんな父が大好きだった。



小さい頃は、単身赴任から帰ってきて、疲れているのに僕とキャッチボールをしてくれた。

最近では、夜遅くまで僕のとても長い話を聴いてくれたり、勉強を教えてくれたりする。




父は、僕の憧れそのものだった。







「母さん、父さんは?」

「健…早いわよ…」



苦笑いする母さん。
その地味な笑顔は、昔からだった。


僕がダッシュでリビングに行くと必ず、母さんはあの言葉を言って笑うんだ。



そして、父さんはいつも自分の書斎で仕事をしているんだ。



僕は父さんも母さんも大好きだった。



「健~もう少し静かに階段下りてくれない?うるさいんだけど」


突然現れたのは、姉の雅。




桜井 雅 サクライ ミヤビ

高2



顔は…まぁ、美人でモテるらしいけれど、俺だったら絶対に嫌いなタイプ。
高2のくせに大人げないのがたまにキズ。

……なんて言うのも、好きだからなんだろうけど。



「今日くらいいいだろ!姉ちゃんなんかどうせ何もしてないんだから、うるさくたって関係ないだろ?」


「は?もう一回言ってみなさいよ」


「何回でも言ってやるよ」



前言撤回!
やっぱりさっきの言葉取り消す。

姉ちゃんは最低最悪です、で。