「汐莉さんの状態は……」
もう医師の言葉なんて耳に入らなかった、
……いや、入れたくなかった。
真実を聞くのが……
現状を知るのが……
ただ、ただ。
……怖かったから…
最初に倒れてから、
そのあとも何度か発作は起こしてはいたけれど
あたしは病院に行かなかった。
健にはいつも元気に振る舞っていたし、
学校では発作が起きても我慢した。
けれど、それは一種の“逃げ”だったのかな……?
病気の進行から逃れるための唯一の“逃げ道”だったのかな……?
あたしは、自分が病気だということを
信じたくなかっただけなのかもしれない。
でも、信じないことしか自分を守る術はなかった。
自分の病気は重いことが、
今更になってあたし自身の重みに変わってきた気がした。
暗い暗いトンネルの中で、
出口の見つからないトンネルの中で、
もがき続けているようにあたしは…もがき続けていた。
誰もあたしに気付いてはくれない…
助けの光は見つからない…
病気は、真っ暗なトンネルのように、あたしの心にも影を落としていく……。
『病気は、どうしてあたしを選んだのだろうか』
どこかで読んだ小説の言葉。
読んだ当時は、他人事だと思っていた言葉。
そんな言葉が、今のあたしにはピッタリで
……涙が溢れてきた。
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