『ど、どうしたの?』
いきなり叫ぶ満くんに、ビックリしながら聞いてみると、
「あれっ、あれ!」
そう言いながら、彰たちを挟んで向こう側を指差す。
フェンスからこちらを見ている、怪しい人影。
よくよく目を凝らしてみると……
『女の子?』
どこかで見覚えのある女の子が、こちらを……違う。彰を見ていた。
「あれ!溝口っすよ!!」
あ、そうだ。見覚えがあると思った。写メ見たじゃん、あたし。
え?じゃあ…何…?
溝口さんの好きな人って……彰?
じゃあその……仲良くしている女って……あたし?
「何してんの?」
「あ、紗也ちゃん!おかえり〜」
あたしと満くんに気づいた彰が、たーくんと共にこっちに近づいてきた。
『た、ただいま…』
チラリとフェンスの方を見ると…
『っ……!』
すごく怖い顔をしてあたしを睨んでいる溝口さんと、目があった。
「おい」
『ほぇ!?』
溝口さんの方ばかり気にしていたせいで、彰が想像以上に近くにいたことに驚き、変な声を出してしまった。
「何その驚き方……っつか、どうかした?」
『え?』
「紗也ちゃん、お顔真っ青だよ?」
たーくんも心配そうな顔をしていた。
あぁ、あたし何してんの。こんな小さな子にまで心配かけて。
『大丈夫。元気だよ』
「よかった〜」
にこぉっと笑ってくれたたーくんにつられて、あたしも笑顔になる。
もう一度、フェンスを見たときには、溝口さんの姿はなかった。