それから時は流れて、今日は3月10日。


ホワイトデーまで、あと4日。



「紗也さーん!」

『あ、満くん!』



学校の帰り道、偶然に満くんと遭遇。



「今帰りっすか?」

『うん!満くんも?』

「はい!あ、そうだ。溝口の連絡先、ゲットしましたよ」

『ホント!?』



ホントです、と、人懐っこい笑顔を浮かべる満くん。


まるで、絵が上手にかけたから誉めてとでも言っているちっちゃい子みたい。



「何回かメールとかしたりして、接点つくったんすけど…普通の女っすね」

『普通の女の子が毒盛る?』

「うーん…あ、そういや…実る可能性の低い恋愛してるらしくて。思いが届かないだの、仲良くしている女がいるだので…ちょっと敏感になってるっつーか…」



それとチョコに毒盛るのとに、どんな関係があるんだろ。


そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか家の近くに着いていた。



『満くん、家この辺なの?』

「いや、彰ん家に用事が……って、あれ彰じゃないっすか?」



そう言って、家の前を指差した。


そっちに目線を移すと………



「あっくん待ってぇ」

「拓、遅い」



たーくんとサッカーをしている彰の姿。


あんな彰だけど、意外と子供好きで。あーやって近所のチビッコと遊んでいるのを見かけることは、珍しくない。



「あっくん足速いよぉ」

「拓、トロい」



……大人げないのが欠点だけど。



「うわー。俺、あんな優しい顔して笑ってる彰、初めて見た!」



あたしの隣で、信じられない、といった表情で彰を見つめる満くん。


あの表情はホントに、ちっちゃい子用。あたしにも見せてはくれないんだ。


だからちょっと、たーくんにジェラシー感じたり、ね。



「あぁ!?」