そんな、わたしを仮初めの檻から解き放ってくれた彼に、何かを期待したのだろうか。 本当の檻から抜け出す術(スベ)を求めて――。 ……だけど、それだけが理由じゃない。 わたしがカインの服を掴んだのは、救いを求めたわけでも、利用したかったわけでもない。 だってあの時彼は―― カタン、と物音がした。 「あ……」 きっとカインが帰ってきたんだ。 わたしは今までの思惟を中断させ、ベッドから降り、玄関へと向かった。