あの男が、残酷な笑みでわたしに近づいてくる。

逃げたくても、足枷がそれを許さない。













『い、や…』

コワい。

『こないで…っ』

マタ、ウバワレル。















男が、目の前に来た。

怯えるわたしに、手をのばす。










世界が、紅に染まる













「いゃあああーー!!」




ガバッ!

「っ!?ハァ、ハァ…」

あらんかぎりな悲鳴とともに、わたしは目覚めた。

そこはベッドの上で。

一瞬、何がどうなっているのか分からなかった。





「夢…?」

荒い息を吐き、浅い呼吸を繰り返しながら辺りを見回す。


白いベッドに、淡い色の家具たちが静かに在った。


そう、ここはカインの…


「よかっ、た…」

安堵の息がわたしを満たす。