低くなった男の声に、レイヴンは畏れを感じながら言葉を紡ぐ。

「っ、“彼女”はただ今行方不明中です。繋いでいた鎖は断ち切られていたと……」

「逃げたというのか?」

「まだ確証は出来ませんが恐らく……」

「ククッ……」

レイヴンの言葉に、男は嘲るように嗤った。

「愚かなやつめ。飛べない羽根でどこへ行こうというのだ?」

「……」

「レイヴン、命令だ。アレを捜してここに連れてこい」

「はっ」

男の命令に短い返事をし、レイヴンは風のように姿を消した。








誰もいなくなった部屋で、男はひとり呟く。









「逃がしはしない。……俺の天使」
 

その瞳に確かな狂気を宿して。


第二幕・了