自分が何をしているかなんて、考える余裕はなかった。


ただ、身体が勝手に動いた。

それだけ……だった。









「っ、カイン?」

俺の腕に閉じ込められたララは、涙を拭うこともせず驚いた顔で俺を見た。

俺は何も言わずに抱きしめ続ける。









ララの、震えがおさまるまで。



















「……ありがとう」

その呟きが聞こえたのは、そうしてから随分時間が経った頃だった。


やんわりと俺の腕を払い、ララは赤く腫れた目で微笑んだ。





「……無理に話さなくていい」

「……!」

「……メリッサが情報を手に入れた以上、いずれは分かることだ」

「っ……」

ララがつらそうに下を向く。





「だが、今知る必要はない」

「……え?」

「そうだろう?」

下を向いたララが顔を上げる。


そして、また泣きそうな顔をした。


「っ、ありがとう……」

二度目のその言葉。






他人に感謝されるなんて、初めてだった。







何故だろう。


少しだけ胸が熱くなった。




この気持ちは、何だ?


初めて感じる“それ”は、空っぽだった俺のココロをほんの少し、埋めてくれた気がした。




ゆっくり、ゆっくり。

芽生え始めるものがあった。