マンションに戻り、部屋のドアを開けると目の前にはララがいた。

言われた通りちゃんと風呂に入ったようで、カインに渡された着替えのワイシャツを着ていた。

小柄なララにカインのそれは大きいらしく、裾が膝の辺りにまでとどいている。

背中にあるであろう、小さな羽根は皮肉にもその小ささのおかげで、上から服を着てもあまり邪魔になっていないようだった。


ララはカインを見ると、タタタッと駆け寄ってきた。 
十分に拭いていないのか、金色の長い髪からはポタポタと水滴が滴っていた。

「おかえりなさい」

ララにそう言われたカインはピクリと反応し、じっとララを見つめた。

しかし何も言わずにその横を通りすぎた。

「……」

そんなカインの行動に、ララは哀しそうにうつむきドアの前で立ちすくした。






ふぁさ

「!」

しかし、直後頭にやわらかい何かの感触を感じ、驚いて顔を上げた。

頭には、タオルが乗っていた。

ララはすぐに振り返り、カインを見た。

「…風邪をひく。ちゃんと拭いておけ」

「…っ!」

それはカインにとっては機械的な行動だったが、久しぶりに触れた人の優しさにララは涙が出そうになった。