コツコツと、自身の靴音だけが響く通路をカインはひとり歩いていた。

何度も往来しているここは、とある超高層ビルの中。

今彼がいるのはその最上階で、辺りはしんとしていて他人の気配は感じられない。










やがてたどり着いたある部屋の扉の前で、カインは静かに言った。

「コードネーム04、レインだ」

すると、自動で目の前の扉が開いた。

そしてそこには高級そうなソファーに腰を沈めながら、両手を顔の前で組んでいる男の姿があった。

漆黒の緩やかなクセ毛に、血の色にも似た瞳を持つその男は美しい顔立ちをしているが、どこか冷たい印象を受ける。

まだ若く、青年と呼ぶに相応しい。


彼はカインを見て口を開いた。

「ああ、待っていたよレイン」

レインとは、カインのこの“組織”での呼び名で、雇われた時に目の前にいる男につけられた。

もとの名に近い発音だから違和感は少ない。

今ではこちらの名を呼ばれるのがほとんどだ。

「依頼通り屋敷の人間は全員始末した。スカーレット」

「そうか。ご苦労様」

カインの報告を聞き、男…スカーレットは冷たく微笑んだ。