「しょーがないなー。和明、この前あたしが最初に歌ったやつ」 「了解♪」 和明がギターをチューニングしている間に、他のみんなは観客のようにあたしと和明の前に座っていた。 曲が始まる。 (あのときより少し上手くなった。) ミツ兄の音とは違ってあたしが合わせやすいような柔らかめな音。 前奏聞いて、 意識集中させて、 軽く目を閉じる。 いまここにはあたしと和明しかいない気がした。 前奏も終わりに近づき、あたしはゆっくりと目を開けた。