「だって私…好きな人、いるんだもの」
顔を上げた美崎はそう言ってふわっと笑った。
美崎に…好きな人?
やっぱ俺の恋は…虚しく散っちゃうのか…
「でもね、バレンタインには…あげられなかったんだ」
眉を下げ、困ったように笑う美崎。
美崎の好きな人…誰なんだろう。
いいなぁ、そいつ。
だって美崎だぜ?
美崎に愛されるほど、幸せなヤツはいねぇーだろ。
「だからね、私…ホワイトデー…つまり今日、その人にあげようと思ってるんだ」
美崎はそう言って持っている鞄の中を探る。
そうか。
美崎も逆ホワイトデーか…
みんな、俺と同じようなこと…考えてたんだな。
俺だけじゃなかったんだ…
俺は美崎にあげるつもりだったクッキーの箱をポケットの中で握りつぶす。
もう、こんなの…いらねぇや。
だって受け取ってもらえないんだぜ?
そんなクッキー…用無しだろ?
「はい、これ…ハチに。」


