好きだから、別れよう。




家の前に立つ私の元へ、白いワンボックスカーが近付いた。


空は相変わらず、明るく光り続けている。



車が私の目の前で停まり、運転席の窓が開いた。




マサキさんがいた。



「アヤちゃん!ごめんね。ホントごめん!」



必死に謝るマサキさんを見て、涙が出そうになった。



忙しいのに、来てくれた。


たかが、団扇1本のために、私のところへ。





マサキさんをよく見ると、まだスーツを着たまま。



着替える暇もなく、

お仕事終わって、本当にすぐ駆け付けてくれたんだ…。


マサキさんの優しさで、帯で締めているのとは違う胸の苦しさを感じた。







「乗って乗って!」



浴衣が邪魔して、苦戦しながらも助手席に乗り込むと、そこにはいつも電車で見ていたマサキさんの横顔があった。



優しさに満ち溢れた表情に、真っ直ぐな目。



「アヤちゃん、車の中暑い?寒い?」



「あっ、大丈夫ですっ!」


私を気にかけてくれる、オトナの男性。





おかしいな…

車の中、冷房効いてるのに

どんどん身体が熱くなっちゃうよ…。






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