「……っ」 彼の問い掛けに、私は痴漢への恐怖からか、なにも答えられなかった。 ただ、涙でぼやける視界で、一生懸命彼を見た。 彼は私の様子で痴漢に気付いたのか、 吊り革に掴まっていた右手を離して私の肩を掴み、 強引に彼の方へ引き寄せた。 .