好きだから、別れよう。




うわぁ…。


今日に限って、押し合いへし合いの大混雑。

後ろからどんどん押され、私の意思とは無関係に電車の奥へと流される。


やっ、

ちょっとーーーー!!

私は彼の側に行くのにぃぃぃぃぃ!!

流れに抵抗しながら彼を捜すと、


…なんと、意外と近くにいた!


その距離、およそ50cm。

急に心拍数が上がるのがわかった。




背の高い彼は、人波から頭ひとつ出ていて、慣れた様子で吊り革に捕まっている。

こんなにぎゅうぎゅうなのに、彼だけ涼しい顔。


私は人の陰から、そんな彼を上目遣いで見ていた。




ごめんね、リカコ。

せっかく考えてくれた作戦、今日は決行できなそう。

…でも、

こんなに近くで彼を見れるなんて…

私、すごく嬉しいよぉ…。





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