「女って・・・・・・?」
「言葉のとおりです。私は女です。」


今度こそ


「だから分かるんです。一葉の辛さ、悲しさ、
どれだけ見た目にコンプレックスを抱いたかを」


助けるから。


「私だって中学の頃虐められました。でも、」




「家族だけは私を守ってくれました」








「一葉はその逆に近いんです。でももっと悪い。




学校でも悪口を言われて、それでもいてくれる人はいた。
でも・・・・そのなかに悪口を言う人もいた。」

一葉のお母さんは黙って訊いている。
顔色一つ変えずに。

「それを支えるのが親の役目。それを貴女は放棄した」
「それは違うわ」
やっぱり顔色をこれでもかってくらい変えずに
静かに反論してきた。
「あんな風になるのをちゃんと否定した」
「それはもう手遅れです」
自分の感情が少しずつわきあがってくる。



落ち着け



「その前に支えなきゃ意味がない。
貴女が言ったときにはもう一葉の心はボロボロだった。
そのボロボロになった心を隠すために
女の格好をした。
それを否定するってことは
ボロボロの心をさらけ出すこと。それは」








「一葉を生きたまま殺すのと一緒です」
「・・・・・・・・生き埋めってこと?」
呆れた表情で私を見つめてくる。
「そうです。身体は元気なのに心が死んでしまう。
心を隠すだけじゃなくて
自分を守るためだったんです。だから女装をした」

溢れ出す、自分の感情。
止めようにも止められない。

「でも本当は自分を認めてほしかった。
知って欲しかった。
・・・・・・・・・それなのに変装して
本当の自分を知ってくれる人なんていなくなった」







「親すらも否定したから」