家に入ると一葉のお母さんが真っ直ぐ
リビングまで案内してくれた。

「えぇと、一葉には兄弟っているんですか?」
「えぇ、弟がいるわ。中3の。」
「へぇ!お名前はなんていうんですか?」
「一樹よ」
「似てますねぇ」
「性格や趣味は全然違うけどね~」

さらりとひどい一言をいうもんだ、この人は。
さっき収まったばかりの苛つきがまた・・・

湧き上がってきた

「やーでもそれも個性じゃないですか?」
「さ、ここに座って?」
「あ、はい」
今度は打ち切りかい・・・。
「・・・・どこまで認めたくないんです?」
「・・誰のことを言っているのかしら?」
「貴女が一番分かっているでしょう?」

「どうしてそんなに突っかかるのかしら?」

お母さんの顔が少しずつ不機嫌な表情になっていく。
「あなたは格好いいから気にしたこともないんでしょう?
あの子の悩みも、曲がってしまったことも。」
「知ってますよ」
さっき全部きいた。
いや・・・全部じゃないかもしれない。
それでもちゃんと教えてくれた。
「一葉が中学の頃、どれだけ辛い思いをしたか知ってる。
そして今、何を思って、こうなってるかも知ってる。」





絶対負けない
何も分かってないこの人に。

「少なくとも私は貴女よりもずっとずっと
一葉のことを知っています」

できれば一番でありたい。
でも私は一番には・・・なれない。
それでも

「「私」って高校生にしては随分紳士的な言い方ねぇ」
「紳士ではありません。」










「私は女です」









一葉は私にとって一番大切だから。