「そんなの無いよ〜!! おいらすんごく楽しみにしてたのにぃ〜!!」

「そうは言っても、お前動物だからな。ペット持ち込み可、と、思うか?」


シュリが、冗談ともつかない口調で言って、肩をすくめる。

確かに……。

至極、ごもっともな指摘である。

「嘘だぁぁぁぁ〜。白身のお魚が〜、マッシュポテトがぁ〜。おいらの大好きな海老がぁぁぁ……」


ロイが頭を抱え、のたうちながら悲痛な叫びを上げる。

その声が部屋中に響き、シュリは耳を塞いでうるさいと意思表示をした。

そうしながら何だか少し、同情心が、心に過ぎるシュリであった。


だから……。

シュリは、ボソリと呟く。


「だが、勝手に忍び込む分には、どうとでもなるかもな……ただし、気付かれなければの話だけどな」

「シュリ〜ィ〜!!」


大きなロイの双眸が、ウルウルと潤み、喜びを訴える。

と、同時に地面にペたりと座り後ろ脚で身体を支え、前脚を拝みポーズにして若干、首を可愛く倒す――お願いポーズ――でシュリを見上げる。


「シュリ! 手引き頼んでも良い?」

「しょうがない奴だ……」


シュリは、そう言うと、溜め息を付き、肩を竦めた。


時は着々と進み、間もなく運命の時間が訪れる。


止まってしまっていたシュリの時間が、わずかだが動き始める。

だが、彼はその事に気が付かない。


イシスとシュリ。


二人の運命の歯車が軋んだ音をたてて廻り始める。





時は満ちた。




今まさに、祝宴の一夜が始まろうとしていた――。