『はぁ……? 何だこれは……。凄く派手なんだけど……。これ、俺が着るのか?』


シュリは、贈られた衣装を見て、思わず後ずさる。

それは、白地の立て衿に、金の刺繍の入った膝丈迄ある上着。

それと、同色のやはり刺繍の入ったズボン。

小物では、房飾りの付いたサッシュベルトがあって、ブラウスは辛うじて、飾りも刺繍も無い、シンプルな物と言う代物だ。


『さながら童話に出て来る王子様衣装だな……。こんな物、俺に似合う訳が無い……』


いやいや、銀髪に青碧の瞳を持ち、そこそこ男前のシュリだ。

似合わない訳ではない。

ただ、着慣れないと言うだけだ。

いや、『一度だけこういう衣装を身に着けたことがある』とシュリはふと思い返した。

遠い昔にたった一度だけ。

脳裏に甦るベールごしの幸せそうな女の微笑。

あの頃の思い出をほんの少し心に燈し、シュリはささやかな幸せに酔う。

考えにふける彼の目の前を、コロナはにっこり笑って衣装を見せ付ける。

そんな彼女の瞳は、笑う事無く真剣そのものだった。

有無を言わさぬ迫力が、現実に返ったシュリの身を、再び緊張に晒す。

そこには、シュリとコロナの無言の攻防戦があった。


「ささっ……。観念して、御着替えなさって下さいまし。ほら此処に靴も揃っておりますわ」


にっこりと笑って靴まで見せるコロナに、負けを痛感したシュリは、心底彼女の怖さを痛感したのであった……。