「気になってる子はいるんだけどね。」
九条さんは、作業を止めずに真面目な顔で言う。
九条さん、よっぽど好きなんだな…その人のこと。
「松本さんは?…彼氏いないの?」
「い、いませんよ?
あたし…付き合ったことないんですよ。なんて言うか…男の人って怖くて。」
そう…中学生の時にちょっとしたことがあって、それから男の人を信じられなくなった。
「…あっ!あたし何言ってるんだろ。
すみません!今の聞かなかったことにして下さい!」
あたしは、ふと我に返って謝った。
「アハハ…松本さんって、意外と話す子なんだね。俺、ずっと大人しい子だと思ってたよ。」
ードクン
九条さんってこんな顔で笑うんだ。
ちょっと意外…てかこんなの反則だよ。

