「どうして?」 あたしは唇を噛み締めて、九条さんの涙を親指で拭った。 こんな九条さん…初めて。 「涼子が泣かないから。」 「へ?」 なんでかな? 堪えていたはずの涙が、止まることなく、溢れ出す。 「九条さんっ!」 あたしは九条さんの胸に顔をうずめた。