worlds of last generationシリーズ 第一部

彼はいつもそうだ。
適当な態度を取ったかと思えば、いきなり真面目になる。
その変貌ぶりは幼馴染みとはいえ、正直ついていけない。
そして何よりも…
酷く勘が良くて、いつも何かあると誰もいない場所へ連れてってくれる。
きっと今日も、彼なりの気遣いから屋上へ連れ出してくれたのだろう。

「何も無いよ。静夜の気のせい」
そう言って笑っても、きっと彼には通じない。
それでも、昨日の事は言っちゃいけない。
漠然とした思いが私を止める。

「俺にも言えない事?」
「え?」
静夜の両腕が、私の顔の横のフェンスに置かれる。
独特の針金同士がぶつかる音が耳元でしてして、少しうるさかった。

「そんなに俺って頼りない?それとも…――」
そう言いながら顔を近付ける。
「俺が嫌いだから言いたくないとか?」
酷く冷たい視線を私に向ける静夜。
たまに見せるその刺すような瞳で、初めて私を見ていた。

「え…?」
驚いてそう声を漏らすだけでやっとの私に、彼は続けた。
「気付いてないと思った?でも、あんなに露骨に避けられてたら誰でも分かるでしょ」
冷たい視線はそのままに、苦笑する彼をただ見つめる事しか出来ない。
「俺の事嫌いなら、はっきり言ってくれた方のが楽なんだけど…?」